THE YURI TIMESでは、漫画『どれが恋かがわからない』(KADOKAWA)の著者、奥たまむし先生にインタビューさせていただきました。「好きな人ができすぎ!」てしまうハイスピード百合コメディとして、百合オタクの皆さんの間でも話題の本作品は、英語版が発売され、海外でも話題です。第一回目では、企画のきっかけやキャラクターについてお伺いしました。

©奥たまむし/KADOKAWA

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—この度は『どれが恋かがわからない』(以下、『どれ恋』)の英語版発売おめでとうございます!インタビューの機会もいただけてとても嬉しいです。

ありがとうございます。インタビューに向けて、いろいろとメモしてきました!

— 本当ですか?!ありがとうございます!では、さっそく『どれ恋』の企画が生まれたきっかけを教えていただけますか?

それは、編集さんから言われたからです(笑)『どれ恋』の前に連載していた『明るい記憶喪失』が完結し、次の連載は「女の子にモテる百合はどうですか?」と提案があって、私が食いついたカタチです。私が【まんがタイムきららミラク】で描いたデビュー作が百合ハーレムものだったので、編集さんの言葉を聞いて「絶対、百合ハーレムものをやります!」と即言いました。相手は百合ハーレムとは一言も言ってません、私だけが一人で言ってたんです(笑)

言うのは良かったのですが、実際に作るのは大変で……そりゃあ皆やらないわって。あんまり百合ハーレム作品ってないですよね?

— 言われてみると、百合ハーレムって意外とないですね。あとがきにも「すごく大変だった」と書いてあったのが印象的でした。

まんがタイムきららの中には、女の子のキャラクターがたくさん出てくる百合ハーレムみたいになっちゃってるみたいな作品はいっぱいあるけど、公式に恋愛モノはほとんどなくて。私は、恋愛で女の子が女の子を好きになって……というのを絶対にやりたかったのですが、恋愛でやろうとするとすっごい難しかったっていう。『どれ恋』を描いてみて、百合ハーレムをやるのは面倒臭いということがわかりました(笑)

デビュー作では「主人公に触れるとみんな惚れちゃう」という特殊設定があったので、何かしら特殊な設定があれば描ける!と思って編集さんに聞いたら「ダメです」と……。前作『明るい記憶喪失』もずっと担当してくださってた方で、いつもはなんでも「良いです」「OKです」と言う編集さんに「あー、それはないほうがいいですね」と言われて、「そんなー!!!」と絶望しました。絶対に「良い」って言うだろうって思ってたのに(笑)それで、話を作るのがかなり難しくなりました。特殊な設定なしでも自然と主人公がモテる方法を考えると、今のカタチになりましたね。

— どれ恋といえば、魅力的な登場人物ばかりですが、キャラクターはどのようにして生まれましたか?

三角関係や四角関係を描く作品はあるから、それよりも多い人数がいるなと思って。人間の悩みの元になる目・耳・鼻・舌・身・意を意味する仏教用語の六根というのを見つけたのですが、意を除いた、いわゆる五感をベースにキャラクターとその名前を決めていきました。

百目鬼マリアは目、湊は耳、国政カオル(薫)は鼻、味間カリンは舌、そして白沢リリは触るという意味で沢にしました。下の名前を全部カタカナにしたのは、自分が覚えやすいからです(笑)メイちゃんは「迷」のメイです。苗字は「それいけ!」をイメージして空池だったり、仏教用語の空に関連してたり……。迷ってるけど、頑張って進め!みたいな。

©奥たまむし/KADOKAWA

メイの周りにいるキャラクター達には、それぞれ自分が好きな人の要素を入れました。王道はもちろん、イケメン系や高身長など、1人につき、2人以上の要素を入れている夢のようなキャラクター達です。好きな人たちを入れたら出来上がったという感じです。でも、それぞれのキャラクターが声とか、味とか、癖があるので、みんな変な人になってしまったっていう。

カリンは、味で人を好きになるってすごい(笑)味が必要だからキス魔の設定にしようとしたのですが、そしたら舌を入れないと……。でも、演劇やってる人だったら、そういうことをやりそうだな、と。カオルも、一話目ですぐに服を全部脱がすのは問題だけど、服の匂いが臭くなってるはずだから、脱がすしかないよなと。マリア先生はめっちゃ普通です。ほとんどの人が視覚で人を好きになっているから。仕草から感じ取って、この子は私のことが好きだなとわかるんだけど、見てるだけで、手は出せないという設定にしました。最初は先生ではなくて、社長とかお金持ちにしようとしていたのですが、いつの間にか心理学の教授になりました。心理学の先生だったら、見た目で判断できるし、人の心を読めるのでは、そしたらメイちゃんも心理学科に入学してもらおうと。心で迷ってるし。

— とても緻密に設定を作って漫画を描かれているんですね!ハイスピードで進む物語にページをめくる手が止まりませんでした!

「普通、こうならないんじゃない?」ということが、漫画だと起こり始めるから、それが楽しいんです。だから漫画を描いています!

一ヶ月に一回しか連載が更新されないので、早くしないと私が飽きるというか(笑)ゆっくり物語が進む百合もありますが、私は逆に性格的にできないんですよね。ハイスピードですが、読みやすい漫画になるように気をつけています。

一番最初に、キャラクター達の関係性を作るのが難しくて。好きな女の子たちを作るところまでは良かったのですが、モテなきゃいけないキャラクターを作るのが大変でした。かっこいい人や美人はモテるけど、遠い存在で、そりゃモテるねと。普通っぽい、超美人でもイケメンでもないっていうところを……探すのが……本当に……大変でしたね。


奥たまむし先生へのインタビューは第二回に続きます。次回は、奥たまむし先生のことや、先生からのメッセージ、そしてプレゼント企画もありますよ!どうぞお楽しみに!

大変な準備期間を乗り越えて奥たまむし先生が描かれた『どれが恋かがわからない』は第一巻から第三巻まで大好評発売中です!

©奥たまむし/KADOKAWA

人の数だけスキがある。

主人公・空池メイは高校の卒業式に片想いしていた友人に告白……

しようとするも失敗してしまう。

そのため「大学でぜったい彼女をつくる!」

と意気込んで入学するのだが

なぜか次々とメイのもとに女の子たちがやってきて……!?


奥たまむし・プロフィール

2014年『宮守♡タイフーン』でデビュー。代表作に『明るい記憶喪失』(全6巻/KADOKAWA刊)がある。アンソロジーへの参加や、【百合ドリル】の企画など、多方面で活躍する注目の作家である。『どれが恋かがわからない』(KADOKAWA刊)を連載中で、単行本は3巻まで好評発売中!


本インタビューは2023年9月に百合カフェアンカーにて実施しました。百合カフェアンカーさん、ご協力ありがとうございました。


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